表示回数: 116 投稿日:2009/11/13 23:49
新月の独白 今日の夕方一回投稿したものを修正してみました。
表のブログに上げた後日談に地味に繋がっています。地味に。

なーんかまだちゃんと書ききれてない気がするな…。




クレス、君にはまだ、何かを本当に「歌う」ことなんて出来ないよ。
この世界は一篇の物語に過ぎない。
その物語の「登場人物」になってしまう限り、君は物語を歌うことは出来ない。

君はこちらから見ていても苦笑してしまうくらいお人よしだ。
そして、君は、物語に呑まれすぎてしまう。
登場人物に心から感情移入し、それに振り回されてしまう。
歌う者は、物語に呑まれてはいけない。
歌う者は、物語を、まるで楽器を演奏するように操ることが出来なくてはいけない。
君は言葉の力を、物語の力を、まだ少しも知らない。

どんな出来事も、それを歌う言葉次第で、
誰が悪役なのか誰が主人公なのか、その物語が悲劇なのか喜劇なのか、
歌を聴く人が何を感じるのかということさえも、本当に何もかも、操ることが出来てしまう。
物語に呑まれる限り、人は言葉に欺かれる。
物語に呑まれずにいられるようにならなければ、
物語と言葉の力の向こうにあるものなんて見えやしないのに。


君が友人になったあのピエロ君の人生も、僕にとっては、一篇の「物語」にしか過ぎない。
そんなことを言ったら、君はきっと、僕に平手を喰らわせるだろう。
ただでさえ、全てのことを物語としてしか思えない僕のことを、君は多分よく思ってないし、
何より、君にとって彼は、もう、「物語」ではなく「友人」なんだから。

でもね、クレス。
僕はきっと心から彼の人生を物語として肯定し、歌いあげることが出来る。
けれど君にはきっとそれが出来ない。
物語に心を奪われ、彼に自分を重ねてしまったような君には、きっと出来ない。
感情移入して、同情して、
彼の生きた人生がもっと幸せなものだったら良かったのにと、
一瞬でも思ってしまった君には、彼の物語を歌うことなんて出来ない。


まあ、僕は……。
…君は、今のままでもいいんじゃないかと、思うけどね。
 

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