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投稿日:2009/11/13 23:49
新月の独白
今日の夕方一回投稿したものを修正してみました。
表のブログに上げた後日談に地味に繋がっています。地味に。
なーんかまだちゃんと書ききれてない気がするな…。
*
クレス、君にはまだ、何かを本当に「歌う」ことなんて出来ないよ。
この世界は一篇の物語に過ぎない。
その物語の「登場人物」になってしまう限り、君は物語を歌うことは出来ない。
君はこちらから見ていても苦笑してしまうくらいお人よしだ。
そして、君は、物語に呑まれすぎてしまう。
登場人物に心から感情移入し、それに振り回されてしまう。
歌う者は、物語に呑まれてはいけない。
歌う者は、物語を、まるで楽器を演奏するように操ることが出来なくてはいけない。
君は言葉の力を、物語の力を、まだ少しも知らない。
どんな出来事も、それを歌う言葉次第で、
誰が悪役なのか誰が主人公なのか、その物語が悲劇なのか喜劇なのか、
歌を聴く人が何を感じるのかということさえも、本当に何もかも、操ることが出来てしまう。
物語に呑まれる限り、人は言葉に欺かれる。
物語に呑まれずにいられるようにならなければ、
物語と言葉の力の向こうにあるものなんて見えやしないのに。
君が友人になったあのピエロ君の人生も、僕にとっては、一篇の「物語」にしか過ぎない。
そんなことを言ったら、君はきっと、僕に平手を喰らわせるだろう。
ただでさえ、全てのことを物語としてしか思えない僕のことを、君は多分よく思ってないし、
何より、君にとって彼は、もう、「物語」ではなく「友人」なんだから。
でもね、クレス。
僕はきっと心から彼の人生を物語として肯定し、歌いあげることが出来る。
けれど君にはきっとそれが出来ない。
物語に心を奪われ、彼に自分を重ねてしまったような君には、きっと出来ない。
感情移入して、同情して、
彼の生きた人生がもっと幸せなものだったら良かったのにと、
一瞬でも思ってしまった君には、彼の物語を歌うことなんて出来ない。
まあ、僕は……。
…君は、今のままでもいいんじゃないかと、思うけどね。
